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インド共和国太陽光発電計画
2070年に向けた温室効果ガス削減計画


ー 概要書 ー









編集:株式会社BGサイエンス



 
インド共和国のナレンドラ・モディ首相は11月1日、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、2070年までに温室効果ガス純排出「ゼロ」を達成する旨を表明された。具体的には次の3点がポイントである。

◆2030年までに化石燃料以外による発電容量を500GWに引き上げる。
◆2030年までに総発電量の50%を再生可能エネルギー源とする。
◆2070年までに温室効果ガス純排出「ゼロ」を達成する。

現在、インドの総発電量の大部分は石炭を中心とする火力発電に依存しており、大型水力発電を含む再生可能エネルギーによる発電比率は37.9%にとどまる。国際エネルギー機関(IEA)によると、インドにおける二酸化炭素排出量は23億7189万トン(2019年)と、全世界では中国、米国に次いで第3位である。



 
8年間で7400万KWの発電施設を増設
メガソーラー計画
 
急激な人口拡大と経済成長よって、電力不足が深刻な問題になっている。人口が膨張する農村部では3~5憶人以上が電気を利用できずに生活しているし、さらにはバンガロールやムンバイといったIT産業が発達した大都市でさえ、日常的に数時間の停電が起きている。原因として挙げているのが、総発電量不足、盗電、送電線伸長に伴う電力量の消耗、それに輪をかけるのが石炭不足による発電縮小である。

インドの総発電量は中国、米国に次ぐ世界第3位である。2019年は3億7000万KWのうち、石炭火力が約57%、再生エネが20%、水力13%、ガス火力7%、原子力2%という発電比率である。これを2030年までに、再生エネ割合を20%から40%まで引き上げようという壮大な目標を設定している。すなわち約 7400万KWの太陽光発電ならびに風力発電設備を全国に増設すことでエネルギー確保に向けた問題点を解決しようとしている。





 
計画地と発電規模
インド 開発地域
インド太陽光発電所 計画地
当方で太陽光発電(メガソーラー)を計画するのは地図赤塗りの部分である。
➊ラジャスタン州(Rajasthan)
 発電目標:150Mw

インドで最大の面積を誇る州で、日本の国土に匹敵する。西は乾燥したタール砂漠に面し、東には首都ニューデリーが隣接。南にはベンガルタイガーが棲息する森林が広がる。州都はジャイプルで、州名の由来はラジャ(王侯)スタン(土地)ということから命名された。歴史的に数多くの王朝が栄華を極め、州内に王侯が築いた幾多の城址が残って、世界遺産に登録されるなど、世界中から多くの観光客が訪れる。

➋チャティスガル州(Chhattisgarh)
 発電目標:150Mw

インド中部に位置し、州都はライプル。石炭埋蔵量ではインド国家の40%以上を産出し鉄鉱石も豊かなため、巨大な製鉄所や火力発電所が有る。また国家総セメント量の約半分を製造するなど鉱工業が盛んで、石灰石・スズ・ボーキサイト・ドロマイトなどの採掘が活発。他にも、ダイヤモンドやガーネット、アレキサンドライトなど宝石類の産出量も国家随一である。



     

 
インドの気象と適地の検討
計画地天気図
天気区分とメガソーラー計画地の調査
計画地1のラジャスタン州は、西半分が広大な砂漠地帯で、東半分がステップと呼ばれる気象帯に区分される。
砂漠の気候は、1年を通して少雨で日照には恵まれるが、ソーラーパネル表面に降り積もる砂の排除が困難で、放置しておくと発電効率がきわめて減少する。
ステップ気候は、乾季においては乾燥した晴天が続き、雨季にはある程度の雨が降るが、年間を通すと降雨量は少なめで日照も得られ、ソーラー発電には適した気候である。

計画地2のチャティスガル州は、北部が温帯冬季少雨気候で、南部はサバナと呼ばれる気候である。
温帯冬季少雨気候は、モンスーンの影響を受けるため年間降雨量が多く風が強いので、日照量の確保が困難である。
サバナ気候は雨季と乾季がはっきりしていて、夏季は湿った空気が流れ込み雨を多く降らせるが、夏が終わると乾燥し少雨のため、1年間でみると比較的日照は確保しやすい。




 

太陽電池モジュールのパーツ

太陽電池
上図は太陽電池モジュールの部品
FrontGlase
合わせガラスを使用した採光型の特殊ガラス。ガラスの採光性と耐久性に重視した材質なので、高耐久性を備え、長期間の使用が可能。
Cell
太陽電池モジュール部品の最小単位で、一般的には半導体で構成される。モジュール内部にはCellを敷き詰め、ガラスやEVAで固定し、アルミ枠にはめる込んで1枚のパネルにする。
EVA
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂。セル、ガラス、バックシートを接着させる封止材。両面ガラスモジュールでは透明度の高いEVAの使用により、より高い光透過性を得ることができる。
BackGlase(BackSeat)
合わせガラスを使用した採光型の特殊ガラス。シートを使用する場合は太陽光線の透過がなく、風雨に耐えうる商品が必要となる。



 

高温地域の半導体素材を検討

インドの温度
東京・沖縄・デリーの平均温度
Cell素材の検討
太陽光発電の心臓部となる半導体を形成する素材については、概ね4種類に区分される。これの検討を誤ると工事費が高くつくとか、発電量が伸びなかったり、交換時期が早まるといったトラブルを招いてしまう。
◆単結晶シリコン(変換効率20%)価格高
◆多結晶シリコン(変換効率15%)軽量

◆微結晶シリコン(変換効率10%)価格安
◆CIS化合物(変換効率13%)高温対応

計画地1は日本の沖縄県に近い緯度(北緯24度)で、グラフでは青色で表示。平均的に20~30℃なのでシリコン素材で何の問題もないが、ニューデリーの場合は平均気温が40℃に近づくことから、高温対策として半導体素材はCIS化合物系にすべきである。




 

発電効率を高める太陽光追尾式架台

パネルクリーン

砂漠や降雪地帯に最適な可動式架台
 
インドで太陽光発電を計画する場合に、もっとも注意するポイントはモジュールの採光確保である。計画地1となるラジャスタン州には広大なタール砂漠があり、遮蔽物がないから採光が充分に取れるのだが、パネル表面に砂埃が積もるという問題点がある。この砂埃を毎日のように掃除して除去しないと発電効率は一気に低下してしまう。問題はその方法である。圧搾空気で吹き飛ばすには動力として大きな電力が必要となり、水圧で洗浄するには砂漠に不足する水と電力が必要となる。また、熱帯モンスーンの経路にあたる地域にもリスクがある。突風に飛ばされた小石や木片がパネルに激突して、表面ガラスに損傷を与えるという事故が多発しているからだ。

これらのトラブルを回避するには、写真のような可動式架台を計画することが必要となる。この太陽光追尾式架台は太陽光線に対して直角に近い角度を自動的に保持するため、固定式架台と比べるとも130~Ⅰ50%という発電効率を高めることができる。と同時に、砂の蓄積や降雪、サイクロンによるトラブルをパネル角度を変えることによって回避することが出来る。




 

計画地の日照時間を検討

日照時間比較福岡県とニューデリーの日照時間を比較した 
インドの首都ニューデリー(北緯28度)と、日本では日照時間が大きいとされる福岡県(北緯33度)とを比較してみた。ニューデリーの天候区分は前記のとおりステップ気候で、7~9月の雨季に入っても比較的、日照が確保できる。福岡市と比較すると約150%ほど日照時間が長く確保できる。よってメガソーラーの立地としては、極めて良好である。
好立地に加えて、前記した太陽光追尾式架台を採用すれば、CIS半導体素材の採用による変換効率のリスクを充分にカバーすることが出来る



 

開発地域までのアクセス

インドのアクセス

国際港から計画地までの高速道路網
メガソーラーを計画するのは図上の赤丸印である。メガソーラーのパーツなどは基本的に台湾からコンテナ船に乗せて、インド東海岸のコルカタ国際貿易港に、または西海岸のムンバイ国際貿易港に着く。但し、コルカタ港の港湾水深が浅いので、大型船舶の寄港は要注意である。コルカタ港につけ着ける場合、高速道路に乗って約300km走れば計画地2のチャティスカル州に到着。それから更に800km走れば、計画地1のラジャスタン州に着く。ムンバイ港に着ける場合は北東300km走ったドゥレで分岐して計画地1および計画地2は別ルートを行く。

計画地の近くにモジュール組み立て工場を設置する場合はチャティスガル州がフットワークの面からみると適しており、モジュール組み立て工場を次々と増やす発展性を考えれば、ムンバイないしはドゥレに建設するのが望ましい。