今から50年も前のアメリカだから、食品添加物など化学成分の入った食事は希だった。これら食品添加物の加工品が広がったのは1980年代。スーパーマーケットが主流になって冷凍食品や冷蔵加工品がショーケースで販売されるようになってからである。このことを念頭に当時のフーズ・イノベイションを検証してほしい。
世界初のフード・イノベイション
慢性病とは、肉食中心の誤った食生活がもたらした食原病であって、医薬では治らない。食事については、ビタミン、ミネラルの特にカルシウム、鉄、ビタミンABCEの不足がひどく典型的な若年死の食事である。
7項目の食事改善の指針
(1) 主食は全粒穀物
(未精製・未精白穀物)
(2) 豆類を食べる
(3) 野菜を多食し野菜は生食
(4) 海藻を食べる
(5) 魚介類を食べる
(6) 乳製品・卵は控える
(動物性食品)
(7) 獣肉食は控える、避ける
高カロリー高脂肪の食品、つまり肉や乳製品、卵といった動物性食品を減らす。できるだけ精製しない穀物や野菜果物を多く摂る。さらに委員の1人でもある精神科医のレーザー博士は「精神分裂病(統合失調症)の原因はジャンクフーズ病(高カロリー低栄養食)にある」とまで言いきった。
癌にならないための6大目標
①炭水化物の比率を55~60%に増やす
②現在40%の脂質を30%に減らす
③飽和脂肪酸を10%減、多価不飽和脂肪酸10%
④コレステロールを1日300mg以下に
⑤砂糖を15g/日に減らす
⑥塩分を3g/日に減らす
合衆国立がん研究所(NCI)報告
栄養問題特別委員会は1990年、NCIに対して食事と癌との関係を調査するように依頼した。そのレポートで特に注目されるのは次の事項である。
タンパク質と癌の関係
動物性タンパク質の摂取量が増えると乳癌、子宮内膜癌、前立腺癌、結腸・直腸癌、膵癌、胃癌などの発生率が高まる。これまでの西洋風な食事では、脂肪とタンパク摂取量との相乗関係が有り、結果的に癌が発生しやすい体質ができる。
革命に反対した巨大勢力
革命(イノベイション)には、当然のように痛みが伴うものである。アメリカでも、このマグガバン・レポートに対して全国の利益団体が猛反発、そして激しいパッシングを受けることとなる。
①「今の医学では病気は治せない」
→全米医学会、製薬業界から非難。
②「肉食中心の食生活では健康を維持できない」
→全米畜産業界から非難。
③「砂糖が病原食材」
→製糖業界から非難。
反対勢力の大攻勢により、残念ながらマクガバン氏は次の副大統領選に落選。しかしこれ以降、アメリカ心臓協会やアメリカ国立癌研究所などは、食と健康についての意見を正々堂々と発表するようになった。マクガバン氏と「食事革命」によって、アメリカは救われたのである。